そうして、これらを纏めたことで興味深いことが見えてきました、それを紹介してみようと思います。その内容を端的に示したのが次のグラフです。
中央がセシウム137の、左右の高まりがセシウム137L/134Hそれぞれのピーク |
このグラフには5種類のガンマー線スペクトルがおなじスケールで表示されていますけれども;
▶上のふたつ(2と4)が汚染検体でよく見られるセシウム137とセシウム134が福島第一原発事故で放出された指紋を持っているもの、つまり両セシウム濃度の比率が放出時からの時間で決まる半減期に従っているものです。
▶次いで三番目と四番目(3と1)はセシウム137がセシウム134に対して卓越していた例です。
▶そして一番下は建てられてから百年は経っている古い家屋の床下から採って来た土を測ったもので、此の土は大気圏核実験やチェルブイリや福島の事故の影響を受けていないだろうと考えられるものです。事実このスペクトルにはセシウム137もセシウム134も顕われていません。
さて私たちが注目したいのはセシウム137(うえのグラフで薄茶色に選択されている)が卓越しているスペクトルです。セシウム137が卓越する理由として(単純な誤測定は別として)(a)セシウム137に近接するガンマー線エネルギーを持つ核種を私たちの測定器が弁別できず、その核種をセシウム137と看做して数えている、もしくは(b)福島の事故以前からセシウム137が存在した、と云うことが考えられます。
(a)に関して福島事故で放出された核種のひとつに 銀110m(Ag110m)と云うものがあります。この核種のガンマー線の1本が 657keVというエネルギーを持っており、セシウム137の 661keVときわめて近く NaIシンチレーション型の検出器では分離して測定することは無理とされています。なお Ag110m は一部の魚介類や陸上の生物でも検出され濃縮されているとの報告があります。
(b)とすれば少なくともセシウム134との比率から推定できるもの以上のセシウム137が福島の事故以前からあった、つまり大気圏核実験やチェルノブイリからのセシウム137が残存して可能性が浮かんできます。これらの残存放射能は、日本で平均すると数Bq/kgぐらいと云われていますけれども、調べてゆくと福島事故前でキログラムあたり数ベクレルから百数十ベクレルの記録が(近隣でも)ある由、そうだとすれば私たちの測定の結果も妥当なものになってきます・・・
どちらにせよ、精密測定してみなければ結論は出せませんが。
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