2013年8月31日土曜日

ベクレルチェッカーズの会合に参加しました

長野県下には市民ベースの放射能測定所が何カ所かあり、それぞれにユニークな活動をされていますけれども、こうした測定所や人々のネットワーク(長野県放射能測定所連絡会 ベクレルチェッカーズ)が作られており、今度が6回目となる会合が開催されました。私たちの測定所では前回から出席しておりますけれども、今回(8月31日)は3名で出かけました。参加者総勢は9名、そしてスカイプでの参加が1名でした。

ミーティングはそれぞれの測定所の近況報告や、放射線測定をめぐる新旧の話題で午後の時間は瞬く間にすぎて仕舞いました── チェルノブイリ事故が契機ではじめられ今にも継続している空間線量測定ネットワーク R-DAN のこと、そして最新の ホットスポットファインダー (高感度センサーを備え、空間線量マップが容易に作成でき、スペクトルさえ見られる)の実物を神奈川から持参されたのを披露していただいたり、今回のミーティングのホスト役だったアイメジャー信州放射能ラボ(代表 市ノ瀬さん)のゲルマニウム検出器(私たちのところで微妙な結果がでた場合に、より精密な測定を望まれる時はご紹介いたします)を見せて頂いたりしました。

そうそう次回は10月頃に私たちの「黒姫駅前みんなの測定所」がホスト役になります(yos)

2013年8月26日月曜日

加工食品の放射能を測る

私たちの測定所に持ち込まれる食品は、野菜や穀類や芋類、きのこ、果実といった、単品食材の場合が多いのですけれども、先日、お菓子屋さんからの測定依頼がありました。商品名はあるのですが、今は、たい焼きとかワッフルのようなものを思い浮かべて下さい。

単品の野菜などとちがってこうしたものは例えば、餡になるもの、それを包むものなど、その味や風味や食感などを職人さんが様々に食材を組み合わせ、創意工夫して作り上げるのだとお聞きしました。つまり多数の食材の複合物となるわけですが、測定に際してひとつの物として扱われます。

今、仮にその商品が3種の食材から作られており、そのうちの1種だけがセシウム汚染されていたとしますと、汚染食品がもっていたセシウムは汚染されていないものに混合し拡散されるので、結果として薄められた値となります。組み合わせの割合によってはたやすく検出下限となってしまう事でしょう。

ベクレルフリーを期すならば、商品の素材毎にチェックされることを推奨します(yos)

2013年8月12日月曜日

食品の放射能データ検索サイト

目下、厚生労働省は、都道府県等が調査した食品中の放射性物質の検査結果を毎日とりまとめて公表しています。ですが、それらは膨大な量であり、それらを日常的に追うことはほとんど不可能です。ここに三重大学の奥村先生が、地域、食品カテゴリ、品目、汚染レベルをキーワードにして簡単に調べられるWebサイトを用意してくださっています。右に、そのサイト『食品の放射能データ検索』へのリンクを設けました、ご利用ください(yos)

今日は8月になって2回目の測定日でした

おりしも世は夏の民族大移動のとき、それでなくとも此のところの公開測定日の測定依頼は低調でしたから、測定依頼はまずないだろうなぁと予想しておりました。結果もそれにたがわず何方もいらっしゃいませんでした。それでも、午前午後の両スタッフとも、データ整理など10時から15時まで時間をもてあますこともなし、あっと云う間に予定の時間をおえました。

当測定所が公開測定日を設けたのは昨年10月、冬期はやすんでおりましたが、今日現在の測定シートの通し番号は360、今361番目を測定中です。公開測定の休止期間を含めても一日一件以上という勘定になりますが、改めて“測定すべきものがあるのだ”と云う現実に留意したいとおもいます。

私たちは今期の最初に山菜のひとつである「ふきのとう」を町内各地から手分けして採取し、一斉にベクレルチェックを行いました、その結果、さいわい町内の「ふきのとう」に危惧を覚えるようなものはひとつもなく安堵しました。つい先頃は町内有志の方々が被災地の子供たちをキャンプに受け入れ、それに提供された野菜などたくさんの食材を、キャンプに協賛するかたちでベクレルチェックを行いました、信濃町産の野菜たちもまずまずセーフ;-)

今、私たちは或るひとつの測定の結果をふまえ、町内の学校や保育園のグランドや砂場の土を調べています。役場当局、教育委員会や学校、保育園の支援や協力を得ながら相当な検体を収集しました。子供たちが多くをすごす処がより安心できる環境となるよう幾らかでも役立てるように、と願いながら黙々と測定を実施中です(yos)

2013年8月3日土曜日

検出か、不検出か

測定結果を見るにあたってもうひとつのポイントは「検出」か「不検出」かの判定です。この判定はまったく機械的に行われていて、つまり「検出下限値」を超過したものは「検出」、超過していなければ「不検出」となります。

そこで問題になるのが「検出下限値」です。この値は測定器が与えられた条件で “これ以下のものは何を見ていたか識別できる能力がありません” と告白する時の目安のようなものです。ですから「不検出」だからと云って単純に喜べません、「検出下限値」そのものにも注目して下さい。「検出下限値」そのものが高ければ、その値近くまで汚染されている可能性もあるからです。

また逆に「検出」だからといって、直ちに神経を尖らせる必要がないこともあります。それは此の測定器の検出したと云う核種がほんとうにそうなのか吟味を要することもあるからです。なぜなら私たちが用意したようなセンサーがシンチレーション形(広く使用されています)のものはスペクトルのエネルギー線の弁別がそう得意ではないからです──この判断はスペクトルのピークを睨みながらそれぞれのエネルギー線に分離する解析ソフトウエアによって行われます。

この解析結果は「検出」の判定がある場合、測定結果シートにある<ピーク検出>の項目に表示されます。ここが “” となっておれば信憑性が高まります、また色んな核種が多重にカウントされていること示すために “” と記載されていることもあります。

そしてまた、その解析結果の詳細は放射能測定結果シートの「スペクトル解析結果」で見ることができます(yos)

測定結果をみるときに頭にいれておくと良いこと

ひとつ前に示した測定結果には;
・何時、何を、どのように測定したか
・単位重量当たりのベクレル値
・測定結果のグラフ(いわゆるスペクトル)
・どのような核種を同定したか(あるいはしなかったか)
などが記載されています。
最々終結果である「セシウム合計」値だけを見ていると思わぬ誤解や、数値だけが一人歩きすることにつながりかねません、心しておきましょう。

検体にセシウムが含まれているかいないかを直感的に示しているのが「スペクトル」です。端的な例をしめしますので、イメージトレーニングしてください。

クリックで拡大
この図に土色で示された線が先にあげた測定結果から描いたもの、おなじく水色の線は黒姫山麓の湧水を測定した結果です。黒姫山麓の湧水に目下のところ東電福島第一原発由来の放射能汚染の兆候はありませんし他の天然核種もほとんど検出されず、水色の線はいわば此の辺りの環境放射線つまりバックグランドとほぼ看做しうるものです。

これら2線の比較から明らかなように、検体がセシウム汚染されていると土色の線に見られるような特異なピークが現れるようになります。上図ではセシウム合算で 200Bq/kg 程度ですが、さらに多ければピークがいっそう鋭くなり低ければ平坦な水色に近づいてゆきます。なお上図で選択されたピークはセシウム137のもので、その左方のピークはセシウム134の低エネルギー線、右方は同じくセシウム134の高エネルギー線のピークです、この特徴的なみっつのピークはしばしば「セシウム三兄弟」などと呼ばれました。福島由来の放射能汚染の有無のひとつの目安です。

また低エネルギー側におおきく立っているたくさんのピークは自然界にもともと存在している鉛など、1500keV辺りにみられる低いピークはカリウム40でこれも天然由来のものです。他にも多数の天然の放射線ピーク(ビスマス Bi やアクチニウム Ac など)が観測されて、しばしばセシウム誤判定の元凶になることがあります。

もうひとつのポイントはセシウム137とセシウム134の比率です。

福島第一原発のメルトダウンでセシウムが外界に飛散したときの比率はほぼ 1:1 だったとされ、それ以降は両核種の半減期の違いからこの比率は刻々(とは云っても昨日・今日・明日で劇的に違うというほどではない)と変わっており、測定結果の(測定時での)この比率は福島由来のセシウムの「指紋」と看做されます。

此の値は単純な算術計算で得られますが、横浜市民測定所の青木さんがWebからも計算できるようしてくださっておりますので感謝しつつリンクしておきます → セシウム比の計算

測定結果がこの比率とおおきくずれているときは、他の核種の誤カウントや測定手順の誤りの可能性がありますので、そうした眼で測定や結果を吟味する必要があるでしょう(yos)

おわたしする測定結果

お持ちいただいた検体を測定器に入れ、測定をおえると次のような形でA4紙に結果がプリントアウトされます。これを皆さまに見方などの説明をしながらお渡しいたしますが、あわせて疑問や質問がありましたらどうぞお尋ねください、担当スタッフが出来るだけの説明をおこないます。


なお上の例(二三のデータ欄を空白にしていますが)ではセシウム134とセシウム137が典型的に検出されています。

また測定は皆さまの目前で行われますので、 放射線がカウントされている状況も直にご覧になれますし、その都度に質疑もおこなえます(yos)

2013年8月1日木曜日

測定結果の取扱い

当測定所の測定器から得られた結果はインターネット上に公開されることはありません、少なくとも依頼者が特定されるような形での一般公開はいたしません。数値結果のひとりあるきの予防的見地からスタッフでさんざん協議を重ねたすえに斯く決めました。

ただ得られた結果をより生かすために、今年('13年)の分から測定所内に閲覧用のファイルを用意しており、公衆に流布させないと云う条件でのみ(測定所内でのみ)ご覧いただけます(yos)

このページを開いてくださった皆さんへ

黒姫駅前みんなの測定所は昨年(’12年)秋の茸シーズンから毎週月曜日に公開されて、信濃町に居住の有無にかかわらず、何方にも利用していただけます。

長野県の北に位置する信濃町は、東電・福島第一原発から二百数十キロメートルほどの所にあり、この発電所メルトダウン由来の放射能汚染は近隣の方々の住まわれる所と同一視せねばならぬ酷いものではありませんでした。しかしながら、事故直後の様々な見聞から此の地でも汚染は疑いようもなく、その実態を把握したいと思いながらもベクレルモニターは簡易でも百万二百万三百万円のオーダーの器機です。思ったが吉日でおいそれと手に入れることも出来ません──驚嘆ながら遣られたお方がいらっしゃるけれど──そもそも降ってわいた測定器需要から品不足でしたが。

また、仮令、此の町産の食物から放射能汚染が見いだされなくとも、今日は大流通時代です。今暫くは何処でもベクレルチェック体制は必須、そういう思いが頭を離れなかったところに、昨年夏、願望すれば叶うかのようにベクレルモニターを借りられることになり、その後の展開はすばやく進みました。好適の場所を快く提供してくださった方、そして肝心のオペレーター予備軍(町の学校給食センターで機種はちがうがどんなものか経験済み)が奇しくも何人もいたのです。

昨年秋と今年春からで当測定所はすでに三百近い検体を測っており、スペクトルの解釈にもかなり習熟してきています。そうして当測定所はそれだけにとどまらず、放射能汚染と対峙する最初の不安にもきっとお付き合いできると思っています、みんなゼロから始めましたから。今すぐ測りたいものが具体的になくとも、気がかりが幾らかでもあるのでしたら、手ぶらでもかまいません、どうぞ立ち寄って下さい(yos)